ハーレム異世界転生して焦りたくないから、豚の腸でコンドームを作る
ハーレム異世界転生、うらやましい。
剣と魔法のここではないどこかに召喚されたと思ったら、エルフも王女も女騎士も、出会う女子みーんな俺にホの字でトホホのホ。みたいなやつ。
うらやましい。
いつ“あちら”の世界に召喚されてもいいように、ヒロインたちとの素敵な初夜をシミュレーションしながら眠りにつく毎日だ(今年で25歳になります)。
そんな僕には、長年の疑問がひとつある。
みんな、異世界でも避妊すんの?
こちらは、友人男性18名に回答を求めたアンケートの結果だ。
「ファンタジー世界で性交渉する」という空想をしたことがありますか? またその際、避妊はしていましたか?(N=18名(男性) 平均年齢24.3)
あ、浅はか〜〜〜〜〜〜〜っ
避妊していないと答えた17名に理由を尋ねたところ、
「異世界でくらい好きにやらせてほしい」
「人間とエルフの間に子孫は残せないと思う」
「マジックアイテムとか魔法薬で、なんかこう、いい感じになるんじゃない?」などなど、身勝手な情欲を制御できていないやつばかりで笑ってしまった。
異種族との間に子孫は残せないだあ? 根拠の乏しい俗説を風潮するのはやめてほしい。愛さえあればエルフとだろうが河童とだろうが子供はできる。もっと現実を見てくれ。
それに、想像力に欠けたセックスが差別されるハーフエルフを生むのだから。長老のババアが「この赤子はエルフの里に破滅をもたらす“忌み児(いみご)”じゃ……キェェエエエ!!」とかなんとかスピリチュアルな予言残して卒倒したりするのだから。
エルフに限った話じゃない。相手が人間の場合だって、家族計画は慎重に立てるべきだ。
いや、もちろん生命の誕生は喜ばしいイベントよ。だけど、胸に手をおいて想像していただきたい。自分が“冒険者”みたいな不定期収入の半ニートになったと仮定して、なにかとかさむ育児費用を家庭に入れ続ける甲斐性があるのかを。
僕には無理だ。
ドラクエ11もカジノに首までハマって本編がぜんぜん進まなかった。楽な方へ楽な方へと流れた結果、『闇金ウシジマくん ファンタジー編』みたいな生活を送る未来しか見えない。きっと最期には借金取りに追いかけ回されて「ぬわーーっ!!」するだろうし、息子がベビーパンサー拾ってきたら「我が家のどこに畜生を育てる金があるんだ!」って怒鳴りちらす。
もちろん中には「俺は頑張れるぞ!」という方もいるだろうが、本当だろうか。
まず家を持てるかもわからない。冒険者なんて、宿屋を転々とする根無し草だ。赤ちゃんを連れて旅をするのは絶対に過酷だし、そもそも危険すぎる。我が子が大怪我したらどうするんだ。
ドラクエ5のパパスさんだって、息子が旅立てる年齢になるまでは、安全な城でサンチョ(家臣のおっさん)やオジロン(弟のおっさん)とぬくぬく育児していたはずだ。誰がいっしょにお風呂に入るか、じゃんけんで決めたりしてたはずだ。
ほかにも、教育制度が整備されていなければ、親の手で読み書きや一般常識を教えなきゃならない。自分自身がその世界の教育を受けていないのに、子供に何を教えられるというのか。
というわけで
異世界でもコンドームつけたほうがいいって。
異世界コンドームは豚の腸
とはいったものの、転生先の文明レベルを中世ヨーロッパ程度と仮定すると、サガミやオカモトのような高度なゴム加工技術を期待するのはむずかしいだろう。
なら、自分で作るしかない。論理が一瞬でブッ飛躍(と)んだことは僕自身わかっている。大事なのはライブ感だ。2018年は飛躍の年にしていきたい。
インターネットを頼りに調べてみたところ、様々な有益情報が得られた。抜粋する。
・昔は、魚やブタなど動物の腸をコンドーム代わりにしていた
・現代でも、「ラムスキンコンドーム」という羊の内臓を使ったコンドームが販売されており、自然主義の人々に愛用されている(避妊効果はあるが性感染症は防げない
・Wikipediaで【コンドーム】を調べると、参考画像欄にメチャメチャでかい無修正のチンポが掲載されている
・そのチンポはおそらく投稿者自身のチンポである
・あと、クリエイティブコモンズに登録されてるから、権利者名を明記することで二次利用が可能である。機会があれば素材として使わせていただきたい(ないだろうが)。
大半はハプニングバーでしか益もなければ品もない、真の意味でのトリビアだったわけだが、最初の「動物の腸をコンドーム代わりに〜」は異世界を生き抜くためのヒントではないだろうか。
イきヌくための。
食事等の描写をみる限り、あちらの世界にも家畜は存在すると思われる。
つまり、ファンタジー異世界で健全なハーレムライフを満喫するためには、動物の腸からコンドームを作れるクラフトスキルを身につければいい。
実際に異世界コンドームを作ってみよう
豚の腸を持つ人あるある:意図せずして「サタデーナイトフィーバー」みたいなポーズになりがち。
腸はAmazonで普通に買えた。1780円+送料。モツすらもメール便で届くって、もはやAmazonの存在が魔法に前足後足突っ込んでると思う。
漢方薬みたいな銀色の袋に小分けでパッケージされていて、1本につき2m。えっちな触手用かと思いきや、ソーセージ作る用である。なんと避妊具は本来の用途じゃないらしい。
というわけで、ソーセージメーカーもセットで注文した。レトロなカラーリングが素敵。こちらは定価8100円のところ、半額以下で購入できた。もはやAmazonの存在が以下略。
せっかく買ったのだからと思い、コンドームより先にソーセージを一本作ってみたのだが……この判断が大正解だった。
なぜなら、(これは後から気づいたことだが)ソーセージ作りの手順には、コンドームを作るためのノウハウが詰まっていたからだ。映画「ベスト・キッド」の少年が家事を通じて武道の基礎をマスターしたように、ソーセージの道(タオ)はコンドームの道(タオ)に通じていたのである。
さらに驚くべきことに、オカモト製コンドームの標準サイズが33mmなのに対して、商品ページに記載がある「ソーセージのできあがり太さ」も32〜34mm。僕たちはそれを奇跡と呼ぶのかもしれない。
それにしても、有史以来さんざん小学生から男性器のメタファー扱いされてきたソーセージだが、まさかこんな共通点があったとは。瓜二つの2人の運命が交差する瞬間にはドラマを感じざるを得ない。キングダム然り、あだち充作品然りだ。
そんなわけで、ソーセージ作りの手順を紹介しながら、それがどうコンドーム作りに生かされるのかを解説していく。
ソーセージを作ろう
STEP1
まずは乾燥した腸を氷水でふやかす。
30分くらいすると完全にほぐれるので、片側の端をソーセージメーカーの口金に装着していく。
じつは僕、以前どこかの牧場でソーセージ作り体験をしたことがあるんだけど、そのとき一番苦労したのがこのステップだった。
腸ってぶよぶよして端がどこだかわかりにくいし、滑ったり破けたりするから、棒状のものに深く被せるのが大層むずかしい。
ところが今回はすんなりクリアできた。
というのも、今回購入した腸には、最初からプラスチックの補助板が入っていて、板に沿って挿入することで、楽に奥まで装着できるようになっていたからだ(補助板は最後に引き抜く)。
すごい便利。感心のあまり、思わず「ほえあー」とかいうマヌケな声が飛び出た。
もうお分かりだろう。
ポイント① 装着を補助するためのギミックをつける
STEP2
次は、肉ダネを作る。
ひき肉を混ぜるときは、氷水の入ったボウルの中で、低音を保ったまま練るんだそうだ。しんどかった。真冬にやる作業じゃねえな、と思った。
そのまま長時間こねると色が白っぽく変化し、「エマルジョン化現象」が起こって美味くなるらしい。意味も仕組みもまったくわからないが、なんとなく高貴さを感じる響きだ。爵位でももらえたのかもしれない。エマルジョン肉爵。僕は寒すぎて5分も混ぜていられなかったから、肉爵には会えなかった。
一応、材料も載せておく。
【材料】
・豚ひき肉400g
・塩 小さじ1くらい
・砂糖 小さじ1/2くらい
・酒 ちょっと
・ブラックペッパー いっぱい
・オールスパイス そこそこ
・バジル そこそこ
・タイム 少し
・ローズマリー 少し
・おろしにんにく 少し
※腸に詰める前にちょっとだけ焼いて味見すると失敗がないかと思います。このアドバイスはやさしさではなく、失敗の責任を読者に押し付けようとする「逃げ」の一手です。
ハーブ類がいっぱい入っているのは、なんとなく「若いエルフは香草が好きなのでは」と思ったからだ。根拠はないけど。女子はみんな甘いもの好き。ジーンズの女はヤれる。エルフは草ばっか食ってる。
あと、さっきからエルフエルフ言ってるけど、どちらかといえばサキュバスのほうが好みだ。異世界コンドームの目的として「つけたら吸精(エナジードレイン)されないんじゃないか」という狙いもあったんだけど、アニマル由来の避妊具は性病を防げないらしいから、おそらく吸精耐性も0だろう。
で、肉ダネができたら、いよいよ「詰め」の工程に入っていくわけだが、その前に腸の先端を固結びにする。
ご覧のように、結ぶだけでしっかりした堤防ができあがった。異世界コンドームの先っぽも同様の方法で作ることができそうだ。
ポイント② 先端はしっかり結ぶ
STEP3
腸は破れやすいので、いきなり大量の肉を押し込むと裂けてしまう。今回購入したソーセージメーカーは、レバーをぐっぐっと握ることで、少しずつ、適量の肉ダネが押し出されていく構造。力加減のわからない素人でも安心だ。
とはいえ、調子に乗って雑に扱うと、やっぱり破れてしまうこともある。
ソーセージは少しくらい穴が開いていても美味しく仕上がるけど、これがコンドームだったら一大事である。使用前にはしっかりチェックしたい。
(ソーセージも氷水を張ったボウルの中で作ると裂けにくいらしいですよ)
ポイント③ 穴が存在しないかどうか、厳重なチェック工程を設ける
STEP4
肉がパンパンに詰まった。さすがにこのままでは長すぎるから、食べやすいサイズに調整していく。
いい感じのポイントで3、4回ねじると……
見慣れた姿のソーセージが顕現する。この瞬間が、ソーセージ作りの「トロ」といっても過言じゃない。テンションがびっくりするぐらいブチ上がる。真冬の氷水に殺されかけたこととか、写真撮ってるiPhoneがひき肉でベトベトになったこととか、そんなのどうでもよくなるくらい気持ち良い。ねじられる直前のソーセージ売ってたら爆買いする。ねじり切れるまでねじる。
で、腸は形状を記憶してくれるから、こんな風にねじっただけで戻らなくなる。
ハサミで切り分けると、かなり美味そうな感じになった。あとは、茹でたあとに乾燥させて、燻製するなり焼くなりすれば完成だ。
よし、茹でよう。
エイリアンの卵嚢(らんのう)?
ちがった。ソーセージだ。ソーセージなのか? 「かつてソーセージだったナニカ」と呼ぶのが正しいんじゃないか? 「料理 失敗」で画像検索しても、ここまで見事な事案にはなかなか巡り会えない。SCP財団に収容されてそう。
どうやら、加熱によって皮が縮んでひき肉が飛び出してしまったようだ。参考にしたレシピは羊の腸を使っていたので、「ねじっただけで戻らなくなる」は豚の腸には当てはまらないのかもしれない。完全にやらかした。
そうか……。ねじると形は崩れなくなるけど、内側から圧力をかけただけで元に戻っちゃうのか……。
はい、ここです。このタイミングで天啓が降りてきた。最後の最後で思わぬドジを踏んでしまったが、この仕組み、コンドームに応用できるんじゃないか。具体的には、あの部分を作るのに使えるんじゃないか。
はたして何を思いついたのか。答え合わせは3分後くらいに。
ポイント④???
後日リベンジした写真も載せておく。ついでみたいになってしまったが、ソーセージ作りだけで記事3本書けるくらい楽しい。オススメだ。
コンドームを作ろう
さて、志を同じくする幻想界人(ファンタジスタ)の皆さん、長らくお待たせしました。ここからコンドームを作っていく。
まずは、自分のちんちんにフィットする長さに腸をカットする。
これはマジの余談だが、僕は一般名詞としての男性器は「チンポ」、自分自身の男性器は「ちんちん」と呼称している。
続いて【ポイント② 先口はしっかり結ぶ】の通り、先端部分を固結びにする。
カットの段階で、結び目ぶんの長さを余計に確保しておくのを忘れてはいけない。自分、不器用なので、かなり余裕を持たせました。ウス。
さらに、【ポイント③ 穴が存在しないかどうか、厳重なチェック工程を設ける】に従って、品質チェックも行っていく。具体的には、水を入れて漏れないかどうか確認する。
側面、よし。
先端、よし。
本当にそれっぽくなって、自分でもびっくりしている。
で、伏せていた【ポイント④】の答え合わせ。正解は液溜めである。
このように先をねじった状態で水を入れると……
圧力によって一瞬でほどける。腸はゴムほど伸縮しないので、このギミックを使って液溜めのスペースを確保しようと思う。
最後の仕上げは【ポイント① 装着を補助するためのギミックをつける】。これは、シンプルかつ原始的に、切れ込みを入れて口を広くした。投げやりになったわけじゃなくて、いいアイデアが何ひとつ思い浮かばなかっただけだ。
というわけで
完成……!
異世界コンドーム「幻想生肌(ファンタジスキン)」
実際に使ってみよう
作ったからには、実際に使い心地を確認しなければならないだろう。というわけで相手を用意した。こういう時、呼べば協力してくれる女性がいるのは本当にありがたい。
いつもありがとうございます。
こういう業界でも、写真に集中線入れるのが流行っているんですね。
さあ、準備は整った。
神妙な面持ちで装着していく。ゴムと違って最初から伸び切った状態なので「勃起➡装着」ではなく、「装着➡勃起」という逆のステップをとっても問題ない。むしろその方が根本までしっかりつけられるから、取扱説明書にも後者を記載したい。
ちゃんとつけないと、挿入してから中で外れてしまう可能性があるし、実際に僕はそれで一回失敗してしまった。装着に妥協はしない方がいいだろう。
素材利用:Photo by Delapika - Penis_in_condom
では、感想いきます。
なるほどーー
決して悪くない。悪くない! 薄さはゴムに劣るかもしれないが、誤差の範囲内。ただ、ストロークしているうちに弛(たる)んでしまって、ちょっとずつ外れていくのは困った。行為に集中できない。改良の余地がある。それにしても、はじめに感じていた「ぴとりっ」とした生皮の不快感が、慣れると快感に変わっていくのには驚いた。あの、早漏なので、こんなところでいいですか。
そしてなにより
漏れていない。
「チャンスは、準備された心に降り立つ」。
細菌学者パスツールの言葉だ。君は異世界へ旅立つ覚悟ができているか。僕はできている。俺たちが異世界に呼ばれるんじゃない。俺たちが異世界を呼ぶんだよ。そういう心持ちで今年もやっていきたいと思います。
次回、『ハーレム異世界転生に備えて、海藻からローションを作ろう』でお会いしましょう。
※幻想生肌はソーセージに再利用しました。